当時流行っていた山口百恵の歌
「あなたに女の子の一番大切なものをあげるわー」
そう高校1年の夏、5歳年上のYにあげた
「愛する人に捧げるためまもってきたのよー」
そう、そのまんまに。
Yと付き合いだしてからはバンパーにうらら子の名前を貼った車で高校へもよく迎えに来てくれていた。当時は携帯なんてない時代。車を見つけたらサプライズ。一緒に入学した女友達と疎遠になっていくことが悪いなぁと思いながらもYを優先していた。
デートと言ってもYは車の改造が趣味だったので大抵板金屋で過ごした。ボーと見てるだけだったけどただ一緒にいるだけで良かった。
ある日、Yの知り合い達と車三台で出かけた時の事、知り合いの車の修理をするからと私は車の中で待っていた。堤防沿いでひとけのない場所。パトカーのサイレンの音がだんだん近づいてきて何だろうと見ていたらまさかのパトカー数台に包囲されたのだ。
ワケがわかないままパトカーに乗せられて警察へ。実は車の修理をしていたのではなく車の部品を盗んでいたのだった。慌てて逃げたり隠れたりした連れたちも全員連行された。そしてひとりひとりバラバラにされて生まれて初めて取調室という部屋で事情聴取された。
事情聴取はその日の事を全て話すように言われ正直に話した。
「盗むことを知ってたんちゃうんか!」とキツク言われたが本当に知らなかったから知らないとしか言いようがなかった。
ただ隣の部屋から机をバンバン叩く音や怒鳴り声が次々と聞こえてきて、それが明らかに警官の声だと分かったときには急に怖くなった。警官はヤバいと。
数時間後、両親が迎えに来た。父も母も何度も頭を下げていた。
警察署の階段で小さな声でごめんと謝った。
両親にこんな形で付き合っている事を知られてしまった1日だった。