私が小学生の低学年だったころ近所に住むケン坊という人がいました。
たぶん20歳前くらいだっと思います。
友達はいなくて、いつも一人で足を引きずり駄菓子屋さんにいき、スマートボールをしていたケン坊。
言葉は「あーあー」としか言えず、何を言ってるかわからないので、よく皆からからかわれていました。
たぶん脳性小児マヒという障害だったと思います。
私たちが夕方、ボール遊びや缶蹴りをして遊んでると
必ず寄ってきて拍手したり大声で笑ったり・・・
なんとか輪の中に入ろうとしていたケン坊。
でも誰かが「きしょいやつー」とからかうとケン坊は凄い剣幕で怒りだし いつも帰っていきました。
そんな繰り返しの日々の中、ある日、私はケン坊から100円貰いました。
他の女の子にもあげていました。
そのうちケン坊にパンチラしたら100円くれる!
と、ひそかに広まりみんなが100円欲しさにパンチラしたり投げキッスしたりと・・・
ケン坊はその時だけ、みんなと一緒に笑いながら仲間になれていたんです。
ある日、地面に棒で、「もうお金ない」 とケン坊が書きました
私は 「だったらもう遊べへん!」 と言ったのです
ケン坊は淋しい顔をして足を引きずり帰って行きました。
今でもあの淋しい顔は目に焼き付いています。
そして数十年経ち何げにふとケン坊の事を思い出した日がありました。
あの頃のケン坊はどんな気持ちでいたんだろう・・
そう考えると胸がつまり、涙がこぼれ心から謝りたいと思ったのです。
時はすでに30年も経っていました。
実家の近くに古くから住んでいた知人に電話をして聞きました。
名字すらわかりませんでしたが、ケン坊というあだ名でわかってくれました。
しかし、ケン坊はどこかの施設に入所したあと数年前に亡くなったことを知らされました。
会って謝りたかった。そして本当のお友達になって貰いたかった。
懺悔の気持ちでいっぱいになり、その夜は眠れず何度も何度も心の中で謝りました。
ごめんねケン坊。
ありがとうケン坊。